2008年愁介誕生日企画・独占インタビュー ...4

────(やっぱり凄い人なんですね……)えっと、では質問に戻りまして、今一番ほしいものは何ですか?
「権力」

 
────は!? 冗談ですよね?
「…… ジョークだ。と、言っておこう。とりあえず、自分で休める時間を自由に決める権限がほしい」

 
────(すごく切実に聞こえる……)ちなみに、睡眠時間はどのくらいなんですか?
「その日による。一番寝られた時で、8時間てのがあったな」

 
────意外と多いですね!
「その時は、何があっても起こすなとヒューズを脅して勝ち取った睡眠時間だった」

 
──── し、失礼しました。えと……では普段は?
「特に決まってねぇが、4時間は確保してる」

 
────か、確保ですか……(普通の人は、『睡眠時間を確保』なんて言わないもんね)。やっぱり普通の人の生活とは違いますよね?
「だろうな。洸史でさえ平均6時間は寝てるらしい。あいつは家に仕事を持ち込まないし、碧ともしっかりデートしてるし、それでもあの会社の業績はうなぎ上りだ。一体どうやって時間をやりくりしてんだ!」

 
────でも、そういう人だからこそ、社長に推したのでは?
「うるせぇ」

 
────(こういうところは可愛いのになぁ)?
「何か言ったか?」

 
────い、いいえ、何にも!! す、すると労働時間はどうなるのですか?
「訊くな! 考えるだけで怖ろしい」

 
────そ、そうですよね。響子さんとの初デートは、熱を出してお預けになってしまいましたが、こういうことはよくあるんですか?
「なんだ、熱を出したことか?」

 
────ええ、そうです
「ごくたまにだな。年に1回くらいか、高熱を出してる。風邪は引いたことねぇよ。だから今回のもただの過労だ。こうやって熱が出りゃ、後は下がるだけだからな。楽だぜ。碧が言うには『そうすることで、体が正常になろうとバランスを取ってる』んだそうだ」

 
────そういうものですか。やはり普段から鍛えているので、感染症を起こしたりはしないんですね?
「そのためのトレーニングでもあるからな」

 
────ごもっともです。えー、他にですね、色々過去のことも質問が来ているのですが……?
「何だよ? 今までどのくらい女と付き合ってきたか? とかか?」

 
────な、何故それを!?
「大体予想は付く」

 
────(やっぱり怖い人だ〜)えっとそれはまた後ほどとしまして、先ずは子供の頃のことなどを?
「…………」

 
────(無言になっちゃった)えっと、訊いてはマズかったですか?
「いや、マギー辺りが飛びつきそうなネタだと思っただけだ」

 
────マギーさんは、もしかして愁介氏のことがお好きなのですか?
「そういうんじゃねぇよ。あいつには彼氏がいるらしいからな。イギリスの貴族らしいぞ」

 
────そ、それはまた、凄い情報で! では、マギーさんはそういう「お話」が大好きということですか?
「セレブリティな世界でしか生きてこなかった女だからな、他の人間がどういう子供時代を過ごして来たのか、興味があるらしい」

 
────あなたも十分にセレブリティだと思いますが?
「規模が違う。セシルが総帥になった時、マギーはまだ9歳だったからな。フォスター家はそれなりに成功した家だったが、父親がエインズワースの総帥になったために生活が更に向上したらしい」

 
────はぁ、なるほど。でも篠宮家も結構なお家柄ですよね?
「だから規模が違うと言ってんだろ。エインズワースが本気になったら、篠宮家なんか地上から消えるぞ」

 
────……あの、それはつまり、あなたも今現在はそれだけの力をお持ちだと、いうことでしょうか?
「大いに不本意だが、そういうことだな」

 
────はあー! 改めてエインズワースの大きさを再確認致しました。ところで、話を元に戻しまして、子供時代のことをお聞かせ願えますか?(ワクワク)?
「(必死に舌打ちを押し殺して)別に、話すようなことはなにもねぇよ」

 
────(もしかして、マギーさんを持ち出して質問をはぐらかそうとしたのかしら? でもそうはさせません! 口に出してないので言いたい放題です(笑))えー? では、クリスさんとはどこでお知り合いに?
「誘導尋問か」

 
────ち、違いますよ! クリスさんや他の方々との出会いはどんなだったか? という質問も頂いているんです!?
「ふん、じゃあ仕方ねぇな」

 
────(やっぱり俺様。態度デカイ)?
「おい、話すのやめるぞ」

 
────い、いえ、何も言ってませんですよ
「クリスと初めて会ったのは、中学1年の時だな。当時は銀髪で、見た目が丸っきり外人だったから、ご多分に漏れずイジメにあってた。で、泣きながら逃げてきた所が、俺が授業サボってた場所だったんだ」

 
────ご多分に漏れず、やんちゃしてたんですね?
「うるせぇ。それ以来あいつに懐かれちまって、それからの付き合いだ。髪を黒く染めたりサングラスのアドバイスしたのは俺だよ。名前も横文字だし、入学当時から銀髪なのは知れ渡ってたから、染め始めたのは社会人になってからだが」

 
──── そんな中学生が、高校生になってから、ホテルを作るために暗躍し始めるんですね?
「中学2年の秋からは、普通に真面目だったぞ」

 
────今更そんなこと言っても遅いような気がしますが?
「黙れ」

 
────真面目というのは、どの程度ですか?
「経済学とか経営学とかな、勉強し始めた。洸史はそん時の家庭教師だ」

 
────あ、そういうご関係だったんですか! どういう経緯でそうなったのですか?
「洸史は親戚だ。親父の妹の孫」

 
────えーと……従兄じゃないですよね? おじ?
「……みたいなもんか? 系図でいえば、一世代分離れてる。洸史から見れば、俺の親父は大伯父になる訳だ」

 
────なるほど。だから社長に推したんですね?
「別に、篠宮の血を引いてるからじゃねぇよ。家の存続ってんならともかく、実経営の会社を血筋で継がせる程バカらしいものはねぇからな。あいつはムカつくほど頭の出来がいいし、中身はともかく外面はいいから、社長にはうってつけだろ」

 
────篁社長は、中身も誠実な人のように見えますが?
「あの胡散臭いポーカーフェースがか? 腹ん中じゃ何考えてんだか」

 
────なんだか複雑そうな関係ですね? あ、口では勝てないからですか?
「(ジロリとインタビュアーを見て)いい度胸だな」

 
────あ! い、いえその(あたふた)……あっ、えっと篠宮家の親戚筋の方で、しかもかなり近しい血筋ですのに、役員からの篁社長の風当たりは厳しいようですが、何故ですか?
「ふん、上手く話をそらしたな。まぁいい。その理由は、叔母の結婚がそもそも周囲の反対を押し切って、駆け落ちした末にようやく認められたものだからだ。しかも叔母とその旦那が許されたのは、洸史がハタチになってからだった。二人とももうジジババだぜ。だから、親父の側近だった会社の古株共の中には、あいつを軽蔑してるジジイもいる。そんな中で、洸史はよくやってたぜ。そいつらも、響子のお陰で一掃出来たし、今はかなりやり易くなってるだろ」

 
──── そういう事情があるのに社長をやらせて、恨みを買いませんでした?
「色々言われたよ。そのくらいは覚悟してたしな。だがあいつが社長でいるから、あの会社は今でも業績を上げてる。それをあいつは自慢してもいいと思うんだがな」

 
────そういう性格には見えませんよね
「ああ、鼻持ちならねぇ奴だ!」

 
────では、碧さんに社内の出張診療を依頼したのは、どういう経緯からですか?
「それを頼んだのは洸史だ。今時、若いサラリーマンの鬱病やら自殺やらが多いだろ。だから、社員の健康管理や精神的な安定を図りたかったんじゃねぇの? 俺が碧と知り合ったのは、俺が日本で静養している間のカウンセラー兼ドクターとして、洸史が連れてきたのがきっかけだ。まさか幼馴染で恋人とは思わなかったがな。洸史は頑なに恋人と認めないようだが、その辺の事情は知らねぇ。」

 
────本編でチラッと出てきましたね。師匠さんのお店で飲んだようですよ。お互いに「恋人」「幼馴染」と言い合ったそうです?
「ああいうところが笑えるんだ。くっくっ」

 
────なるほど。そういう目でお二人を見ていくと、小説の読み方も変わってくるかもしれませんね。では次に、話したがっていた過去の女性関係について、お訊きして行きたいと思います?
「(唐突にムッとして)話したがってた訳じゃねぇ」

 
────(軽く無視)ぶっちゃけ、どのくらいの女性と関係を持ちました?
「いきなりそう来るか!」

 
────嫌ならお話しなくても構いませんけど、いずれは響子さんにも知れてしまいますよね? 恋人となる以上、そういうことが気にならないはずがありませんし……?
「(諦めたように溜め息をついて)特定の恋人ってのは、高校時代に一人と大学時代に一人いた。中学の時はやんちゃしてたこともあって、年上の女に食われたこともあったが、それも14歳になる頃にはなくなってたしな」

 
────14歳になる頃にはって、じゃあその前ってことですよね? ……随分早熟というか、マセた子供だったんですね?
「金を持っててそこそこに顔が良けりゃ、女は寄ってきたからな。おまけに子供だったから、好き勝手し放題されたぜ。お陰でそっちの知識は、その辺の大人よりも付いちまったが」

 
────それで14歳を迎える頃……あ、それって真面目になった時と一致しますね。何かあったんですか?
「特別なことは何も。ただ、女を抱くのがこんなものだと分かっちまうと、興味も薄れるしな。そういう女たちを相手にしてたんで、世の中のことも見えるようになった。それで、バカだと世の中渡れねぇって、勉強するようになったんだ」

 
────それでいきなり経営学だの経済学だのって、行きませんよね。普通は学業に専念すると思うのですが?
「学校の成績は、試験の度に毎回上位10人に入っていたからな。別に殊更する必要なかった」

 
────(物凄く嫌味な中学生だったのね!)それは凄いですね。遊び歩いていたのに、ちゃんと勉強はされていたんですか?
「いや、あまり勉強はしてなかったな。予習復習くらいだったぞ」

 
────(うわぁ、すっごい憎たらしい中学生だわ! でも会ってみたい気もする、どんなマセガキだったのか!)えー、それでは高校時代と大学時代の恋人について……
「今、腹ん中でなに考えてやがった?」

 
────はい!? な、なにも考えてませんよ!
「ふん」

 
────(ひぃ〜! そんな冷笑を浴びせられたら、まともに話せませ〜ん! 響子さんの気持ちがよ〜く分かります)え、あ、あのっ、こ、高校時代の?
「高等部に入ってすぐ、俺のマジ好みの女と出会った。そいつは2年に在籍していて美人で、自分の言いたいことははっきり言うタイプだった」

 
────響子さんとは違うタイプですね
「元々俺の好みは、そういう女だったんだよ」

 
──── はぁ。その人とはどういうご関係だったんですか?
「経験豊富な俺は、自分のテクでもってその女をメロメロに酔わせて虜にして、俺から離れなれないようにした。まだまだ子供だったな」

 
────(あ、自嘲なんて初めてだわ。こういう面もあったのか)そんなに好きだったんですか?
「初めて出会った好みの女だったからな。俺も必死だったんだ。今考えるとバカなことしたもんだが」

 
────というと?
「そいつの方が四六時中俺を求めるようになった。それまでは俺からしか誘ってなかったのが、そいつの方から誘ってくるようになって、それが段々エスカレートした。で、急激にその女に対する興味が無くなったんだ。そいつも、俺を求めることにばかり頭がいっぱいで成績も落ちてきたんで、それで目が覚めたらしいな。結局別れてそれっきりだ」

 
────とても高校生とは思えない恋愛だったんですね。そもそもそれって、恋愛だったんですか?
「当時はそう思っていたな」

 
────えっと、では少し大人になった大学時代の恋人さんは、どうだったんですか?
「どうって言ってもな……、顔は美人だったしスタイルも良かった。性格はハッキリしていて、一緒にいて楽な女だったぜ。デートもしたし、抱きもした。お互いに波長が合ったんだろ。俺はホテルの事業を進めるのに忙しかったが、それでも一緒にいて落ち着く相手だった。あのまま結婚してもいいと思ってたぜ」

 
────そういう女性がいたんですか! でも、何故結婚しなかったんですか?
「俺が自分の将来を見据えていたように、彼女もしっかり計画を立てていたってことだ。大学を卒業と同時にアメリカに留学すると言って、大学4年の冬に別れた。付いて来てほしいとは言われなかったし、俺も一緒に行こうとは思わなかった」

 
────(ありゃ、遠い目をしちゃって)高校時代とは全く違う恋愛だったんですね。その方とは、今でも?
「アメリカでグリーンカードを取得して、弁護士になって活躍したらしいぜ。んで半年前か、アメリカの凄い資産家と結婚した。パーティで何度か顔は合わせてる」

 
────その時にお話したりなんかは……
「するか阿呆。あっちは結婚してんだぞ。お互いに元気そうならそれでいいさ。それにエインズワースは基盤がヨーロッパだから、アメリカからは敬遠されがちだ。アメリカの企業にもいくつか資本は入ってるが、本土じゃ圧倒的に弱い。そういう立場の俺と彼女が、間違ってもにこやかに談笑してみろ、どんな噂が立つと思う。もうお互いいい大人だ、それくらいの節度はあるさ」

 
────じゃあ、昔の恋人に会って、今の恋人との間に亀裂が入って…なんてロマンチックな展開には?
「そういうの一番嫌いだろ、ウチのヘッポコ管理人は。お前が一番よく知ってるんじゃないのか?」

 
────(ギクッ)し、知りませんよ! 私は作者じゃありませんから! じゃあ、今は響子さん一筋なんですね?
「エインズワースの総帥にさせられてから、恋愛なんかする暇もなかったからな」
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